人にはそれぞれ「適正」というものがあります。
趣味や好み、友だちづきあいなども適正があって、自分の個性にあったものを自分で選びますよね。
おとなになって就く仕事にも「適正」があります。
よく「好きなことを仕事にしてはいけない」と言いますが、これも人によると思います。
好きなことだからこそ続く人と、好きなことはストレス解消のために仕事と分ける人とがいるわけです。
最近は、中学校や高校でも適性検査があって、子どもが将来の見通しを持つために、自分の適性を知る機会があります。
ずいぶん前の刊行ですが、村上龍さんの「13歳からのハローワーク」は、世の中のいろんな職業が掲載されていて、その職業に向く人なども記載がありましたね。
さて、自分の適性というものを知るためには、まず、自分がどういうことが苦手で、どういうことが好きで、どういうことが得意か、どういうことに興味があるか、どういう性格的傾向があるか、などを知らなければなりません。
要するに、「己を知る」ということです。
意外と人って、自分のことを知らない人が多いですよね。本人は客観的に自分見ることができないので、当然と言えば当然ですね。
己を知るためには、自分の意志が必要です。自分から関わり、実際に経験し、失敗と成功を繰り返して、自分には何があってるかを知ります。そうやって初めて、自分のことを知ることができるわけですが、これがもし、すべてを用意されている環境で、自ら何かを選ぶこともなく、与えられたものや環境だけで生きていった場合、どうなるのでしょうか?
自ら選んだり、考えたり、葛藤したりしなくていいわけですから、失敗はないかもしれません。しかし、自分の不得手とするものは知らないままです。
そうすると、自分の適性が何かはわからないままです。
前回のブログまでの連続のストーリーの中で出てきたAさんは、就職した企業に合わなかったというよりは、サラリーマンという職種に適性がなかったことが考えられます。
Aさんの個性として、
・ルールはきっちり守る
・対人スキルが不得手
・マニュアルが好き
といったことが挙げられます。
加えて、
・真面目である
ことも利点ですね。
そうすると、きっとAさんには、もっと個人でどんどん流れに沿ってやれるような仕事の方が向いていたのではないでしょうか?
例えば、CGデザイナーやプログラマー、デザイナーやエンジニア、研究者なんかも適性が高そうです。
Aさんは、ストーリー上では、自閉症スペクトラムと診断されましたが、発達障害だからといって道が閉ざされるわけではなく、自分の適性に合った仕事と生き方ができれば、思わぬ成功を収めることができるのです。
不幸なことに、話の中ではAさんは、2次的な疾患を患ってしまい苦しむのですが、もっと早くから、Aさんの特性に気づき、Aさんに合った生き方を提案してくれるような人が身近にいれば、不幸な思いは感じずに済んだかもしれませんね。
保護者にとって、乳幼児期は、まだまだ大人になるまで先のことのように感じられるかもしれませんが、生まれたときからその子の人生は始まっています。
特に、この時期に獲得した人的スキル(コミュニケーションスキルとも言いますね)や愛着関係、自発性や主体性、自律性などは、これから先のその子の人生の基礎になります。
後々でも身に付けることは不可能ではないのですが、乳幼児期に獲得するのに比べて何倍もの時間と労力が必要になってきます。でも、愛着(他者との信頼関係といった方がいいかもです)だけは厳しいかも・・・。
何はともあれ、子どもにとって己を知ることは、今後の人生の指標になっていくわけですが、それにはまず、個々の個性や特性を受容する環境がとても重要ですね。