これまでの教育といえば、心理学などの心の動きをもとに学習方法等が考えられることが多く、どちらかといえば、かなり情緒的なものでした。科学的な見解に基づいた学習法ももちろん活用されていましたが、教育においてはほとんどが、経験によるものでした。
しかし、近年、脳科学が進化し、それまでこころの動きを科学的に研究する心理学において、「こころ」の動きは「脳の動き」であることが徐々に浸透し始め、心理学は心の科学であるとの認識が進んできました。
これらは、様々な検査技術の開発によります。
MRI(脳構造を画像化する技術)やEEG(脳波)などは、これまでも一般的で、脳のどの部分に傷があるか、脳内の電気活動が正常かどうかなどを判断するときに使われています。
近年、これらの技術よりも進んだfMRI(様々な種類の刺激とこころや認知に関連した脳部位の活動の増加を調べることができる)やPET(脳内で作用している薬品や物質を3Dで色をつけて画像化できる)などの開発により、感情や認知の動きが、どのような時にどの部位が働くかなどを視覚的に確認することができるようになりました。
世界的に見て医療が最も進んでいるアメリカでは、このfMRIやPETにより、自閉症やADHDなどの高機能自閉症を生後すぐから診断できるようなり、また、それらに有効な薬の開発も進んでいます。
それぞれの脳機能にあった学習法を見出すことが可能ではないかということで、OECDでは、年々、脳と学習の関係性や、学習を科学的に解明することで、有効的な学習法(ひとりひとりに合った学習法ということが前提)を見出すための研究が進んでいます。
実際に、先進国の中では、乳幼児教育に関しても、「脳科学」を根拠にカリキュラムを組む国も多くあります。
残念ながら日本は先進国でありながら、医療の研究にかける予算があまりにも乏しく、上記のような先端技術を取り入れている病院がごくわずかであるため、教育や発達障害などに関する知識や技術・認識などもかなり遅れています。
特に、教育者と科学者との意識の相違が多く、研究を進めようにも、教育者は情緒的に感情論で話を進めようとしますし、科学者は科学的に客観的事実に基づいて話をすすめようとしますので、なかなか話し合いにすらならないというのが悲しい現状です。これはどうも日本に限ったことではないようですが・・。
自分に合った学習法を獲得すれば、子どもは(おとなもですが)どんどん学習が楽しくなってきます。学習が楽しくないと感じるのは、自分に合ってないからで、自分に合った方法や興味のあることであれば、どんどん吸収していきます。
そして、学習は、何も子どもだけがするものではありません。おとなも人生において、死ぬまでが学習の連続です。
人類が楽しくいろんなことを学べるように、まずは、教育者と科学者との垣根を越え、互いに専門知識を出し合い、同じ目標に向かって歩みを揃えるところから始め、先々は日本でも、情緒的ではなく、科学的根拠に基づいた教育によって、誰もが楽しく学べる環境になってほしいと思います。