先般、厚生労働省より、「愛の鞭ゼロ作戦」のパンフレットが発行されました。
大人による体罰や暴言が、子どもの脳を萎縮・変形させてしまうという科学的な実証がもとになっています。
福井大学のこどものこころ発達研究センターにおいて、虐待を受けた子どもの脳をfMRIにて調査したところ、体罰により前頭前野が萎縮し、暴言では聴覚野が変形してしまっているとのこと。(友田明美教授)
国連においては、体罰や暴言を法的に禁止しているところは50か国以上にのぼっています。日本においては、まだ法的整備まではいっておらず、ガイドラインどまりです。
近年の脳科学や遺伝学の進歩は目覚ましく、様々なことがわかるようになってきました。その結果、これまではいわゆる「精神論」で済まされてきたことも、科学的な根拠をもとにタブーとなってしまうことも増えてきました。
子育てにおいては、誰もがイライラすることもかっとなってしまうこともありますよね。子どもにとって、おとなの体罰や暴言はよくないことだと頭では理解できていても、実際はなかなか抑えがきかずについ・・・というのが子育て世代の現状ではないでしょうか。
これまでの精神論は、そういった大人の抑えの利かなさを、自己保身や正当化するために、「子どものため」「しつけ」と称して行ってきた感は拭えません。
特に、育てにくさを感じる子どもの場合、体罰や暴言に遭う確率はどうしても高くなってしまいます。
体罰や暴言を行う大人を責めてしまうことは簡単です。
しかし、「なぜ大人が体罰や暴言をおこなってしまうか」にも目を向けることも大事なことです。
多くの場合、体罰や暴言などを行う大人が、体罰や暴言によって育てられてしまった環境が存在します。自分が育てられた環境を、そのまま行っている場合がよくあります。正しい子育ての方法を知らないわけですね。
ここで、いわゆる負のループが生まれてしまいます。
親から子へ、その子から次の世代へ、と望ましくない育児方法が伝達されてしまうわけですね。
そこを変えていくことは、時間も労力もかかります。
しかし、どこかで変えていく、断ち切ることをしなければ、いつまでたっても大人の犠牲になってしまう子どもは減ることがないですよね。
子どもに悪影響な子育てを変えていく、断ち切っていくことが、いまの大きな課題のひとつですね。
そのために、国、行政や関係機関、私たち保育所など乳幼児の教育に携わる人間は、その事実を受け止めつつ、単純に親のニーズだけを受け入れるだけではない子育て支援を充実させていくのが使命でもあります。